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Empire! Empire! (I Was a Lonely Estate)フロントマンKeith Latinenのインタヴューを
翻訳していくプロジェクトです。2009年の12月と記事自体は古いですが、現在の活動に繋がる発言が多く見受けられるので、頑張ってみようと思います。
原本は以下のサイトで閲覧・DL可能です。
http://issuu.com/subtitlespub/docs/md10fall09


interview with Keith Latinen
Empire! Empire! (I Was a Lonely Estate)(※以下Empire!)はソロプロジェクトとしてはじまったそうですが、いつ、また、なぜフルバンドにしたいと決めたのですか?
Empire!は僕とCathyがAnna FlyawayというメインプロジェクトのEPを録っていた時に始まったんだ。僕たちはなんとなく、そのバンドがバラバラになってしまいそうだと気付いていたから、僕は努力の大部分を注ぐことをそのEPからEmpire!に代えたんだよ。Anna Flyawayが解散したとき、僕たちは内心Empire!へ大きく飛躍できると思っていたし、結果、地道に続けることができてるよ。

その、過去にやっていたバンドというのはEmpire!と異なったベクトルのものでしたか?また、あなたと奥さん(Cathy Latinen)は常に両方のプロジェクトの核であったのですか?
僕が思うに、最大の違いというのは、Empire!は僕、そしてCathyから始まっている、ということだね。つまり、僕はこのバンドが常に普遍で単一なものになる、というロマンチックなパーツを失ってしまったんだ。僕は現実的で、バンドには固い結束が必要なこともわかっているけれど、その上で、僕はEmpire!には他の誰がいても活動できると考えているんだ。メンバーを固定したい、とは思っているけど、時にはそれが解決にならないこともあるからね。

別のインタビューで、バンド名とこれに対して込められた意味を知って私はなるほどと感心してしまったのですが、またここでも簡単に説明していただけますか?
全く同じことは言わないようにするね!
"Empire! Empire!"という部分に関して、これは人生におけるたったひとつの願望を表しているんだ。あなたにとっての、究極の夢だね。僕にとっては、音楽をやることだ。僕たちが生きていくのに、この夢を持つということがどれほど重要であるかを、エクスクラメーション・マークが強調している。"(I Was a Lonely Estate)"ここには僕がこのバンドを始めた頃の気持ちが込められている。置き去りにされたり、たったひとりでいたこと、とかね。当時からたくさんのバンドを知っていたけれど、それぞれやりたいことを形にするに至らず、バラバラになっていってしまった。このカッコの言葉は、夢が叶いそうにないと感じたり、どんなに些細なこと、とるに足らないことでも、なんだか反省しなければいけないように感じた状態にあることを象徴している。この名前には、どんなにうまくいきそうになくても、その夢を追いかける勇気が込められているんだ。

バンドの歌詞、曲名は、今説明してもらったバンドの名前と同じようなシンボリズムに裏付けされているのですか?
まったくその通りだね。なんでも遠慮なく発信したり、書いたりすることは本当に貴重なことだよ。僕は、普段ならまったく関連性は無いと考えられそうなポイントでも、自分の手のうちではつながりを持たせていたいタイプなんだ。なにか[曲を]つくりあげようとして、僕はそのことについて[歌詞を]書くわけだけど、その過程というのは僕の書き上げたもの全てをつなぎ合わせて出し切らせてくれる一助になっているね。

「What It Takes to Move Forward」は、もともとあなたの両親の家であったHypnotoad StudioのAll Gloryで、2年間かけて録音されましたが、フルアルバムを録るにあたってどのような手段を用いたのですか?
8種類のマイクを通した僕のラップ・トップで全て録音したよ、Presonus Firepodと、Adobe Auditionを使って。いちばん使ったマイクはSM 57(SHURE)と、Rode NT1のセットだね。レコーディングとランニング作業をするのに.wavの拡張子では僕のパソコンは重すぎて、フレーズやコーラスごとに、曲を分割しなければならなかった。1テイク録り終えてから、次へうつるっていう方法だったよ。そうでもしないと、ロードや変換に時間がかかりすぎてしまって、手順を省いたりしてテイクを台無しにしてしまっていただろうね。それでも幾度かは短い手順をスキップしてなんとか録り終えたんだ。これがまた煩雑で手探りの方法だったから、二度と同じ過ちは繰り返したくはないね。

完成させるのに長い時間がかかってしまったのはどういう理由からだったのですか?
それこそいくつもの理由があるんだよ。とりあえずはコンピューターとハードウェアの問題でね、良いテイクを録ろうとするのと同時に、パソコンが間違った手順を踏まないようにしてなければいけなかったんだ。次に、マヌケに見えるかもしれないけど、両親がいない時を見計らわないといけなかったことなんだ。ドラムやマイクや何やらをできるだけセットして、僕自身が何もかもダメにしてしまう前に、彼らが帰ってきた時にはなにもなかったかのようにしなきゃいけなくて、無事に一曲録り終えることをいつも祈りながらやっていたんだ。僕たちはツアーに出ることと、各地で知ってもらうことにも焦点を合わせていたしね。あとは、劣悪な環境で、自分ですべてやらなければならなかったことはとてもストレスがたまったね、ほんとうにこれは幾度も感じたよ。もし君がスタジオに入る時には、何時間、何日かけるか決めて、わかっておいた方がいいね。僕の場合は自分で全てやらないといけなかったし、やらなければならない締め切りなんかも決めてなかった。この状態では働かざるを得ないけど、その分反動も厳しいし、他に何も無ければ、もっと時間を割けるだろうね。

あなたはひとりでEmpire!のほとんどを作り上げているのですか?他のメンバーも作曲に携わったりはしますか?
これまでのリリースはすべて、僕だけか、僕とCathy、という場合のどちらかだね。でも、この状況はほとんど必要性にかられてのものだよ。みんながテーブルにいろいろ持ってきてくれたら、僕は遥かにやり易いし、バンドのために曲を書くことができる。四人の異なったインフルエンスやアイデアを持ち出した方が、ひとりでやるよりははるかに実りあるだろうね。でも不運なことに、僕たちにはメンバー全員でまとまって取れる時間がなかったし、逆に、メンバー同士で、それぞれの役割が十分にできたことはよかったかな。

曲の根幹には、あなた個人が直面してきた経験があったりしますか?
常にそうだよ。僕の人生、ひいてはEmpire!の歴史が、僕の歌詞には綴られているよ。一曲目の"Houw to Make Love Stay"は僕が大学を卒業して人生に一区切りをつけて家に戻ったはいいけど、次に何をすればいいかわからなかった、ということについて書いている。大学を出たあと何が起こって、どこへいって、次になにをして、なんて一切考えたことがなかったかどうかは覚えてはいないんだけどね。少なくとも自分の人生において、完全に方向性を見失ってしまっていることに気付いたことはないな。ただ向き合うことが恐かったのかもしれないけれど。

今回のアルバムを録るにあたって、これまでのリリースと違った点はありましたか?
全てのリリースはほとんど似た行程だったよ。でも、できればメンバーを固定していきたいね。通常はまず僕が曲を書いてギターを録ることからはじめて、それからCathyが自分のパートを考えて録る。そのあと僕がベース、ドラムのフィルインを録って、ヴォーカルを乗せて、曲をくみあげていく。別のパートを書きあげるより前に、それぞれ録音していく方法だね。今回でいうと、(単曲ずつの)ベースを書きあげる前には、(それぞれの)ギターは全て録り終わっている状態になっていたよ。
でも歌詞とヴォーカルだけは、全ての曲のオケが完了していないとできない。僕はいつもそこにいちばん時間をかけているよ。(アルバムのオケ録りが)全部終わってからじゃないとだめだね。本当に歌詞に関しては気難しくて。だって良くなくちゃだめだろ?書き出したら終わるまでは短いんだけど、自分をデスクに向かって作業に取りかからせるのが大変だね。

このアルバムのオケのほとんどはあなたと奥さんによって演奏・録音されていますが、自分たちでだけでやるのは大変だったのでは?
うん、すごく難しいことだったね。ソロワークで宅録するひとたちはみんなすごいよ。特にドラムはやばい。コンディション、ハードウェアにスペース、とにかくいろんなことが不十分な状態に直面してたことばかり思い出すね。セルフレコーディングはもういやだ!なんて全く思ってないんだけど、次から同じことをやるにはいくつかのメジャー・アップデートが必要だね。今のままでやるくらいなら、スタジオへ行って他の誰かにやってもらった方がマシかな。

今後バンドのラインナップが変化していくこともあるかと思いますが、新メンバーに各曲のポイントを教えることはありますか?また、それを素直に理解してくれるでしょうか?Empire!のアレンジは新メンバーのプレイスタイルを変えてしまうようなこともあるような、、、
うーん、新メンバーに昔の曲を覚えてもらったり、何度も何度も教え込むのはいちばんイヤだな。雰囲気をいかに早く掴んでもらうかが勝負ってところ。アレンジはプレイスタイルを補うためにいつもすこし違っているんだ。仮に君が、誰でも正確に演奏できるようにしっかりと書き上げた曲をもっていたとするだろ。おかしな話だけど、メンバーたちはきっと毎回違う方法で演奏すると思うよ。でも、メンバーそれぞれが考えてきたものをレコーデングするとしたら、それはもうひとつひとつがライブだよね。その曲は自分のもので、ちゃんと決まった通りにしなければ、という思いもあるだろうし、それほそれでいい。オリジナルからかけ離れるようなことをしない限りは、大丈夫なんだよ。

Look MexicoのMatt Agrellaが今回のアルバムの最後の曲にヴォーカルで参加しましたが、彼はどのような形でこのアルバムに関わっていたのですか?
数年前の話からはじめないといけないね、ちょうど、彼らがCrucial EPをリリースしたあたりだよ。一緒にツアーをしないかとか、スプリット7"を出そうか、とかいろいろ話をしていて、彼らがミシガンにツアーに来るようになったころには、バンド友達というよりは本当の友達のようになっていたんだ。ライブへ一緒にでかけたり、ときにはホームタウンで一晩明かしたり。僕の知り合いのボートに乗って、夜泳ぎに行ったこともあった。あれはおもしろかったな。みんなワニが心配で心配で、パラノイアのようになってたよ!ミシガンじゃありえないことなのにね。
それから、アルバムを録りはじめたとき、Mattにゲストヴォーカルとして参加しないか、と訊いたら快諾してくれたんだ。彼の声がぴったりハマるような曲が書けたし、彼も実力を出し切ってくれた。天才だよ。


『僕がリバイバルムーブメントの一端を担っている、といわれて面食らってしまったのも認めないといけないけれど、僕自身はemoが最も正直で誠実な形態のひとつで、みんなに語りかけるようなものだと思っているよ。』


自身の作品をリリースするためCount Your Lucky Starsというレーベルを作り、運営開始から2年間ほどで15のバンドとサイン、10以上のアルバムをリリースしてきました。バンドとサインするのはどういう過程で?また、契約するときに考慮にいれていることはありますか?
君も気付いたと思うけど、この質問をされるまでこの2年間でどれだけのことをしてきたかなんて考えたことはなかったよ(笑
)。正直に言うと、あまりこのレーベルをはじめた時のことを振り返ったことはないな。いつも、次に何ができるかっていうことを考えるようにしてるよ。サインすることについてだけど、まずだいたいは共演することがきっかけになっている。インターネットでやり取りをして、ということもあるけど。僕たちが求めているのは、気楽に、かつ楽しんで活動していることと、演奏すること自体を目的にしていること、あとは音楽をプレイすることを愛しているかどうか、だね。本当はもっとレーベルメイトみんなでなにかやりたいんだけど、時間はあるのに現時点では活動のサポートくらいしかできない。ときどきそれがフラストレーションに感じるよ。

CYLSは現時点で成功していると言っていいと思います。この成果をどう繋げていきたいですか?
ありがとう!僕たち自身、レーベルの活動方針を気に入っているし、いつもレーベルのバンドが注目されるような仕事を心がけているから、うれしいよ。レーベルのバンドが大好きだし、バンドたちも僕たちを思いやってくれていると思う。だからリスナーのみんなも繋がっていってくれているんじゃないかな。こういうつながりは実際にバンドの援助になる。
Empire!として活動していなかったら、どれだけサインしているかわからなくなってしまっていたと思う。バンドとはショウを通して知り合うわけだけど、僕がバンドに所属しているという事実は、バンドが何を求めているか理解しているってことなんだ。共通の言語で会話をするということも、お互いの仕事上の関係性を円滑にしているね。

自身のレーベルからリリースすることのメリット、デメリットはありますか?
みんながいいと思うものをいつでも発信できることは本当にナイスだと思う。他の人の評価に頼ることのないリリースができるというのは大きな特典だよ。リリースがうまくいくかどうかが、他のところとは違って全て自分のコントロール下にあるのがいいんだ。デメリットは、Empire!というバンドと、レーベルの作業に割く時間が競合してしまっているところ。僕たちは次のCYLSのリリースのための支払いもしなければならないし、それぞれのリリースの告知活動もしないといけない。こうなってくると、バンドだけの他の人よりは、Empire!に時間をかけることができなくなっていることも実情だね。

Empire!とレーベル運営のバランスはどのようにとっている?
まず他のなによりも、僕は常に忙しいよ。本当に横になる時間もないってくらいに。今は大学院を終えて働いてはいるけど、それでも僕のプレートはいっぱいだ。幸運なことに、Cathyと友人のConor(Cary)がレーベルの運営を助けてくれているし、ドラムのJonはバンド活動の骨休めできる時間をいつも探してくれている。たくさんの友人たちから、少しずつ助けてもらっているんだ。

レーベルにはemoのリバイバルを感じさせるバンドも多く、新たなemoシーンの世代の最先端だと思います。どうしてこのようなリバイバルムーブメントが起こっていると考えていますか?
何事もサイクルなんだ。あと、今の新しい動きに関わっている人たちは、過去の遠回りの過程には関われなかった人たちがほとんど、ということもあると思う。僕はこういった音楽を15くらいの頃からプレイしてきたんだ、しぶとく諦めずにね(笑)。僕はあまりに若かったし、そのころ最初に起こったムーブメントは既に終焉をむかえてた。当時のemoバンドのキッズたちのほとんどは、僕より年下だったんだ。僕がこういったリバイバルムーブメントの一端を担っている、といわれて面食らってしまったのも認めないといけないけれど、僕自身はemoが最も正直で誠実な形態のひとつで、みんなに語りかけるようなものだと思っているよ。

ミシガン一帯は経済悪化で強い打撃を受けました。このことはフェントンに住むあなたにどのように影響を与えましたか?また活動費用を保つためになにか工夫をしていますか?そして、経済の影響を受けたミシガンがまた元の活気を取り戻すことはあると考えていますか?
うん、ツアーにでているときはいつでも、ミシガンのことを考えているよ。愛すべき街だ。経済状況はここにきて特に厳しいけど、みんな苦心して生活してる。費用を最小限に保とうとすることは、僕たちのあたりまえのここでの暮らしには関係がないかな。アルバムの不法なダウンロードに反対して、みんながフィジカルなアルバムを購入して、バンドを、レーベルをサポートしようという気持ちになってくれるように、というのが本当の戦いだよ。手に入りにくい土地にいるから、といっても、この事実はインディレーベルにとっては難しい問題なんだ。無料で手に入る、という状況になってしまった時、音楽に人々は価値を見出せなくなってしまう。(仕方のないこともあるだろうから)不正なダウンロードに反対はしていない。でも、より多くの人が、大好きなバンドのフィジカルなアルバムを買って手に取ってもらえるように、と強く思っているよ。
ミシガンの情勢についてだけど、きっと奇跡的な回復が起こると思う。地元の大学のほとんどの人の目標は、ミシガンを出ることだった。それもいいことかもしれないけど、地元で職に就くのも素晴らしいことなんだよ。

(おわり)


Keith Latinenのインタヴューは以上です。大変興味深い内容でした。
CYLSの今後は、Hightide Hotelやfootball, etc.、boris smileのニューアルバム、失意のうちに解散してしまったMerchant ShipsのEPのカセットテープ、Empire!の"When The Sea Became A Giant"EPや彼らに多大な影響を及ぼしたcolossalのヴァイナルリイシュー、Annabel/Empire!/Joie De Vivre/Reptilianの4way splitなどと、予定は目白押しですが、どうやら他のレーベルとのスプリットリリースも少なくない模様です(プレス費用の捻出も当然目的のひとつでしょう)。僕個人、買って手に入れることが彼らの活動の一助になれば、と結構本気で思っています。そのためにもっと彼らの頭の中を知りたいなあと思ってこういうことはじめてみました。リアクションなどいただけるとうれしいかもしれません。
また続々ネタを見つけてやってみます。

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